詩画集 プラテーロとわたし

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詩画集 プラテーロとわたし
フアン・ラモン ヒメネス 著
山本 容子 絵
波多野 睦美 訳
理論社
2019

『プラテーロとわたし』は、スペインのノーベル文学賞作家ヒメネスが銀色のロバ・プラテーロとの旅の日々を書いた世界中で愛される物語詩集。
全138篇のうち28篇に、大作曲家マリオ・カルテルヌイーヴォ=テデスコにより、原詩とギターの掛け合いで進むギター曲が付けられている。
メゾソプラノ歌手波多野睦美が原詩のリズムを生かした日本語に訳し、自ら歌ったCDも9月に発売される。
この28篇の新訳の詩に、1篇ごとに描きおろされた着彩銅版画28点が1見開きずつ交互に展開する詩画集。







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 机上の文章に世界が一変する。
 そんな体験をしたのは14歳のときでした。
 
“まあなんとたくさんの木の葉が、ゆうべのうちに散ってしまったんだろうね、プラテーロ!まるで木という木が、空に自分の種をまきたがっているみたいに逆立ちして、こずえを地面へ、根を空へ向けているようだよ。“『プラテーロとわたし』「道」(岩波書店,2001)
 
 途端に世界がひっくり返り、窓の外の枯れ木が根っこを空へ空へと伸ばし始め、広大な大地が葉っぱに花になったのです。あの日体感した、一文の強さ、重みは、感動という言葉では到底言い表せない。それ以来、プラテーロは常に一緒です。

 子どもの頃から、そういう目には見えない不確かな存在といつも一緒に生きているような感覚があります。
 
 プラテーロはロバです。ふわふわとした銀色の毛並みの、黒い水晶のような眼をしたロバ。語られるのは、作者のヒメネスがプラテーロと共に暮らしたスペインの田舎町での日々です。

 2011年に理論社から刊行された伊藤武好さん、伊藤百合子さんらの訳も好きなのですが、(長新太さんの描くプラテーロの愛らしさといったら!)、2019年の秋、波多野睦美さんの訳で再び理論社より刊行されたのが本書です。またプラテーロに出逢いなおせることが、とても嬉しいです。
(2021.06.25 ウェブ雛形より加筆修正)

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