旅をした人 星野道夫の生と死

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旅をした人
星野道夫の生と死
池澤 夏樹 著
スイッチパブリッシング
2000

 星野道夫がカムチャツカ半島でヒグマに襲われたという悲報が届いたのは、池澤夏樹が星野と仕事を始めようとした矢先だった。星野はアラスカを撮り続けた自然写真家。池澤はみずみずしい好奇心で世界の森羅万象を見つめる作家である。池澤がアラスカに星野を訪ねると、2人はすぐに意気投合した。会った時間こそ短くても心を通じ合えたのは、見ているもの、聞いているもの、感じているものが重なったからだろう。星野が生きていたら、池澤はアラスカで相当に幸福な時間を過ごすはずだった。それだけに悪夢のような事故死は無念だったに違いない。

本書は、星野道夫について池澤夏樹が書いた文章、講演、対談などを集めたものだ。生前のものもあるが、ほとんどは彼の死以後に記されている。それは「動物だけでなくて背後の自然がぜんぶ写っている。時間をかければ見る人の側の成長に合わせて伸びていってくれる写真、時間をかけて何度も見ることで、ようやくいちばん大事なものが伝わってくる」写真と文章を解釈するとともに、ひとりの作家が友人の死をいかに受け止め、「悲しみから理解と肯定への道をたどったかを記す」物語でもある。

星野には写真集も著書もある。解釈はいらないというかもしれない。しかし、彼は何よりも古代からの神話が受け継がれるアラスカに生きた人だった。作品の深みはそこから生まれている。池澤の言葉は貴重である。星野道夫の真価を知るために。(齋藤聡海)

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