読書の日記

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読書の日記
阿久津隆 (著)
NUMABOOKS
2018

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本を読む人と、その生活。
このような365日の記録が、かつてあっただろうか。
東京・初台の〈本の読める店〉「fuzkue」店主、初の単著にして読書の喜びに満ちた圧巻の1100ページ。
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◇推薦のことば

すべての文章に当てはまるわけではないが、この人の文章はまさに、文は人なり、才気煥発、多動症的バイタリティーを存分に現していて、「ぜひ会いたい!」とも思うし、「会わなくてここにある文章でじゅうぶん」とも思う。
こういう高い能力を持った人は、世間では成功すると思われがちだが、その高さの質が世間と折り合わないために、「労多くして益少なし」というか、端からはわざわざ見返りが少ないことばかり選んでいるように映る。
私はこの人に似た人を二人知っている、一人はアルチュール・ランボーで、もう一人は樫村晴香という70年代からの私の友人だ。
二人とも浅い知り合いは、「もっとうまくやればいいのに(あいつにそれができないわけないんだから)…」と残念がるだろうが、よく知る友人は、これが彼の精一杯の社会との接触であり、彼にその気がなかったら自分は彼と交遊することがなかったと、年とともに感じるようになる。
凡庸な人には彼の能力も魅力も、アフリカの砂漠での後半生が見えず、ただ天才詩人としか思われず文学青年(死語)の崇拝の対象でしかない、そういう、ランボーのアフリカでの日々を思わせる、これはそういう文章で、私の気持ちを掻き立てずにはいない。
――保坂和志(小説家)

ここに収録された日記よりずっと以前の日付のものだっただろうか、阿久津隆は「ストラグルという言葉が好きだ」というようなことをたしか書いていた。ぼくは「ストラグル」という語感をすぐに気に入り、真似して使ってみようと考えたことを覚えている。彼の日記をだらだらと読み進めているとふとした語彙がとてもフレッシュにみえることがある。
去年秋にようやく映画『オデッセイ』を観て、続けてすぐに原作『火星の人』を読んだ。火星に一人取り残された植物学者マーク・ワトニーが生存の証拠として書き続けた日記。
火星にマーク・ワトニーがいて、そして初台に阿久津がいる。初台のマーク・ワトニーこと阿久津隆……よくわからないけどたぶんそんな感じ。二人がしばしば記す、いかに今日自分は疲労しているのかという描写が妙に楽しい。彼らのストラグル=悪あがきの記録を愉快に読めるというこの幸福。二人とも日々のあれこれにまるでこどもみたいに一喜一憂し、ぐったり疲れ、その一方で、日記を書く手を、仕事をする手を、本を読む手をなぜか止めない。
1ページ目の冒頭、つまり1日目の日記の、1行目。読み始めてすぐ、体からふわっと力が抜けた。これがもし映画のファーストカットならばぼくはきっと大興奮したか心底嫉妬しただろう。何気なく置かれたカメラが捉えたなんてことはない実景カットのような、でも、まさしくこの本「読書の日記」のファーストカットはこのカット以外にありえないだろうというような、すてきでとんでもない1行目。
――三宅唱(映画監督)

本の仕事をしているとよく聞かれることのひとつに、本をいつ、どのように読んでいるのですか?というのがあって、正面から答えようとすると説明がむずかしい。けれど、これからは本書を差し出すことでごまかしたい。ぼくのことはともかく、毎日このように読んでいる人がいますよ、と。
阿久津さんは、食べるように本を読む。仕事が忙しい人も、生活が落ち着かない人も、食事はする。ちょうどそんなふうに。人は、食べたものと読んだものとでできているのだ、という気がしてくる。
本書はまた、経営の日記でもある。経営の目的は、数字を稼ぐことではない。店主がいて、店としての理想があり、それに少しでも近づきながら続けていくことが、なにより最初にある。その思いを胸に、仕込みをして、店を開けて、客が来れば迎え、料理をして提供する。その先についてくるものとして、最後に数字がある。そのことの愉しみも苦しみも、すべて書かれている。だからきっと、お店をやっている人には勇気と共感とを与えるし、これからお店をやる人には、遠回りかもしれないがいつかうんと役に立つ。
それより何より、読んでいて、べらぼうに面白い。これは日記の形をした小説だ。阿久津さんと一緒に、今日も明日も、どんどん本が読みたくなる。こんな本が、かつて他にあっただろうか。
――内沼晋太郎(ブック・コーディネーター)

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